ついに来てしまった。真っ直ぐに目の前を見ながらただ思った。
空気に色はないというのに、華やいだパステルカラーが見える。
隣に立つ六年来の付き合いがある男もそう思っているのか、緊張と高揚と後悔が混じったような震えた声で「かっちゃん」と呼ばれた。
「やっぱりやめにしよう」
無理にこの試練に挑まなくても大人になれるのだからいいじゃないか。などと言外に言われるのがわかる。
「ばか。ここまで来て何を言っているんだ」
きっ、と彼の目を睨んで言ってやった。
だが隣の男は「けど」と言い募る。それを「うるさい」と跳ね除けた。
「やっちんだってこのままじゃまずいと思ってるんだろ」
「思ってるよ。思ってるけど何もこんな手を使わなくてもいいんじゃないかって」
「それは何回も聞いたし、何回も話し合ったじゃないか。俺たちこのままだと一生彼女できないぞ」
中学受験をした俺たちは、そのままエスカレーターで大学まで進路が決まっている。
中学、高校、大学と、全寮制の男子校だ。
つまり、社会に出るまで女の子という生き物に接する機会は皆無なのだ。
高校三年生になって、久しぶりに会った小学校時代の同級生が次々と彼女を作っていると聞いて、二人でめちゃくちゃに焦った。
このままではまずい。
そうして二人で真剣に悩んで現状の打開策を話し合った結果、一つの結論に至った。
ズバリ、今日、この女子校の学祭に乗り込んで、女の子に声をかけるしかない、と。
校門を出入りする女の子たちやその関係者が、奇異の目で俺たち二人を見ている。
女子校の正門の正面、しかもど真ん中で立ち尽くす、学祭の華やかな雰囲気に不釣り合いな神妙な面持ちの男子高校生二人。
悪目立ちしないはずがない。そんな状況に、追い詰められていく。
ここまで来て、引き下がれるもんか!
「やっちん」
隣で心配そうな顔を浮かべる男を呼ぶ。
「せーので一歩踏み出すぞ」
俺の言葉を聞いて、やっちんは目をまん丸に見開いた。けれど、俺の覚悟が伝わったらしい。次の瞬間には大きく頷いて、「うん!」と相槌を打った。
「いいか! この一歩は偉大な一歩だ! 俺たちの将来が、今日動く!」
「うん!! 俺たちの人生に健闘を祈って!」
「ああ! いくぞ!!」
そうして俺たちは、「せーの!」で一歩、門の内側に踏み出した。
「彼女を作るぞー!!」
「おう!!」
