しゅわしゅわ

レモネードが好きだった。

サッカーをやっていた頃、栄養補給のためにハーフタイムに食べるレモンの蜂蜜漬けが好きで、余ったそれに炭酸を注いで作るレモネードが好きだった。

サッカーを辞めてからは、レモンの蜂蜜漬けそのものを食べなくなってしまったせいで、自家製レモネードを作ることも無くなってしまったけれど。
それでもついレモン味の炭酸を手に取ってしまうのは、あの頃の思い出があるからなのだろうかと思う。
そんなことを思いながら、今日もレモン酎ハイの缶を買い物かごへ入れた。

そのままレジへ向かおうとしたその時だった。ちらりと見えた広告に見覚えのある顔があった気がして、そちらを見る。
それは飲料メーカーの広告で、『飲んでアスリートを応援しよう!』と書かれていた。
そう言えばこの企業はオリンピックの公式スポンサーだったな。と思い出して改めて広告を見ると、さっき気のせいかと思っていた見知った顔が、しっかりとそこにいた。
青いユニフォームを着て、今まさにサッカーボールを蹴る瞬間を捉えた写真が、広告として使われていた。

「ひでまるくんだ……」

思わずその名前を口にして、まじまじと彼を見る。
広告写真のひでまるくんは、他のアスリート達と同じく真剣な顔をしていたけれども、僕にはそれ以上にサッカーを楽しんでいるように見えた。それは僕が知っている、子供の頃のひでまるくんの印象そのものだった。
そう思った時、ふと、彼との思い出が頭をよぎる。

『柳が教えてくれたレモネード、すげえうまかった!』

些細なことを大袈裟なまでに喜んで伝えてくれる、そんな彼に助けられたことが数多くあった。
どんな時でも楽しそうにボールを追いかける彼が居たから、辛かった練習も楽しかった。

ひでまるくんは、今でもきっとそんなふうに、みんなを元気づけてくれているんだろうな。
明日に迫ったオリンピックの開催を前に、その姿を想像することは簡単だった。

籠に入っていたレモン酎ハイを売り場へ戻し、ひでまるくんの写真が印刷された炭酸飲料水を代わりに籠へ入れる。
この一本を飲んだところで応援になるかはわからないけれど、世界を相手に活躍する彼の姿を目に焼き付けたい。
そんな風に、思うのだった。