試合終了のホイッスルが響いた途端、全身の力が抜けていくのを感じた。
呆然と見る先には俺と同じく真っ白に燃え尽きたチームメイトと、喜んで飛び跳ねる山梨代表がいた。
0対7。
こんなに点を取られる試合がサッカーであり得るのか?
スコアボードが間違ってるんじゃないか?
そんなふうにさえ思ってしまったが、確かに七回ゴールを決められた記憶がある。
最初の一点はこれ以上ないぐらいに悔しかったが、五点目を超えたあたりから感覚が麻痺してきて、試合終了直前の七回目にはもう何も考えられなくなっていた。
これまでの無失点記録が嘘のように崩れ去った。
積み上げてきた自信が崩壊した。
俺はゴールマウスから一歩も動くことができなくなっていた。
「大門」
茫然自失の俺に誰かが声をかけた。
そこにいたのは対戦相手のゴールキーパー、才蔵だった。その横には俺から七点も奪っていったあのおチビちゃん二人もいた。
何の用だ? そう言葉にする気力もない俺に、才蔵はスッと手を伸ばしてきた。
なんのつもりだ? 才蔵の手と顔を交互に見ていると、才蔵が笑った。
「試合後には、互いの健闘を讃えて握手をするものだろ?」
有無を言わせない才蔵に押されて、俺は手を差し出した。才蔵がその手をしっかり握って握手をする。
そうして才蔵の手が離れていくと、今度は小さな手が二つ、俺の手を握った。
「またサッカーやろうな!」
「もっと強くなれよ!」
おチビちゃんたちは一方的に言いたいことを言ってぶんぶんと俺の手を振り、満足した様子で才蔵と共に仲間たちの元へ帰っていった。その背中が異様に大きく見えて、俺は目を擦った。
今朝会った時、試合が始まる前は見た目通りの小さくて頼りないおチビちゃんだった。
それが今や、この俺よりも巨大に見えた。
何がどうなってやがる。もう一度、今度はもっと強く目を擦って遠ざかっていく背中を見る。
目元を擦りすぎて霞んだ視界の向こうで、入道雲が嫌にはっきりと見えた。その時俺は気がついた。
俺を倒したから、デカくなったのか?
入道雲は上昇気流で馬鹿デカく膨らむ。
それと同じように、俺を倒したことで勢いづいたから、あの二人はデカく見えるのか。
そのことに気がついて、俺はやっと悔しい気持ちが迫り上がってくるのを感じた。
試合に負けたこともそうだが、あの二人の可能性に気が付かずに舐めてかかかって痛い目に遭わされたことも悔しい。
あいつらは今よりももっとデカくなる。
巨大な積乱雲になって、この大会に大嵐を呼ぶ。予感じゃない、確信だ。
悔しさに塗れて涙を流しながら、俺はそう思った。
