健康診断の結果は散々だった。
体重は増えたし、視力は落ちた。
その他細々こまごまとしたことが去年より明らかに悪化していて、詳細が届いたときにはさらに打ちのめされるのだろうと思うと、もう既に憂鬱だった。
おまけにこの日のために昨夜から何も食べていないし、化粧もせずに電車に乗ったせいなのか変な乗客に絡まれたりもした。
ひとまず、何かをお腹に入れないと。
すっぴんでこれ以上歩くのは嫌だったけれど、ランチを食べられる場所といえばこの近くでは駅の地下街ぐらいだ。空腹を抑えながらその入り口がある大通りを目指す。
でも、ろくに方向を確認しないまま歩き出したのがいけなかったみたいだ。歩けど歩けど大通りにつかないまま、いつの間にか小さな公園に出ていた。
なんか今日は日が悪いなあ。ここまで散々だともう笑うしかないんじゃないか。
自嘲しながら、いくつかの遊具があるだけの無人の公園を突っ切ろうと足を踏み入れたその時、目の前をふわふわと薄紅色の花びらが落ちていった。
いったいどこから飛んできたのだろう。不思議に思って辺りを見回すと、
「……? ……!」
入り口からちょうど死角になるところに一本、満開の桜があった。
よく見ると隣の木も、その隣の木もちらほらと蕾が綻びかけている。
「……綺麗だなあ」
誰も周りにいないのをいいことに、感想を口に出す。
立派な木ではなかったし、花が咲くにはまだ寒すぎるんじゃないかとも思ったけれど、なんだかそういうところにむしろ親しみを感じる。一生懸命生きているんだなあと無性に応援したくなってしまう。
そうしていつまでも桜の木の下に立ち尽くしていたくなったのだけれど、
ぐー
腹の虫が大きな音で鳴いて、現実に引き戻される。
そうだ、ものすごくお腹が空いていたんだった。そんなことも忘れていたなんてと、自分に少し呆れてしまう。
そうして少しの名残惜しさを残して、腹ごしらえをするためにその場を後にすることにした。
健康診断は散々だったし、
お腹は空いているし、
なんだか良くない日だと思っていたけれど、立ち尽くすほどのいい景色に出会えた。
なんだかそれだけで他の悪いことが全部飛んでいきそうだ。
鼻歌を歌いながら公園を抜け、改めて大通りを目指した。
