あなたのことが大切だったから、誰にも見つからない場所に埋めました。
わたしはあなたを、誰にも横取りされたくなかったのです。
しかし大事に思うあまり、わたし自身でさえあなたをどこに埋めたのかわからなくなってしまいました。
必死に探しましたが一向に見つからなかったので、わたしはあなたを諦めざるを得ませんでした。
そうして本当にあなたのことなどなかったかのように、綺麗さっぱり忘れてしまいました。
そうしたら、あなたはそこに根を張って、力強く芽吹いて、気がついた時には手遅れになっていました。
どこにもいけない哀れなあなた。
けれど、そんなあなたをみんなは大切に思いました。
あなたはみんなに支えられ、やがて大きく成長し、みんなの中心になりました。
晴れの日には木陰を提供し、雨の日にはみんなの代わりに濡れる、その様がとても健気でした。
わたしは遠くから、その全てを見守りました。
今更、あなたはわたしのものだと言い出すことができずに、歯痒い想いをしました。
みんなの役に立とうと、あなたは日に日に大きくなりました。
けれど、大きくなりすぎたあなたはやがて、みんなから疎まれるようになりました。
かわいそうなあなたは、ついに切られてしまいました。
倒れゆくあなたを見て、わたしは後悔に苛まれました。
あの時、わたしがもっと真剣にあなたを探していたら。あなたをわたしがきちんと食べていれば、こんなに苦しい想いをすることはなかったのではないかと思いました。
けれども、もう遅いのです。
わたしは悲しくて、この場所を離れることにしました。
切り倒されたあなたの残骸が残るこの場所で、あなたを思いながら生きることはとても辛かったのです。今度こそさようならです。
だからせめて最後にあいさつだけでもしようと、あなたに近づきました。
そしてわたしは気づいたのです。
切り倒されたあなたから、新しい芽がいくつも出ていました。
わたしは涙を止めることができませんでした。
死してなお誰かの礎となるあなたを誇らしく思いました。
あの日あなたを食べなくて良かったんだと、はじめて自分の行いを肯定することができました。
わたしはここを離れないことに決めました。
あなた自身をきちんと愛せなかったぶん、あなたが遺したものを、今度こそ大切にしようと決めました。
それがあの日あなたを、誰にも見つからない地中深くに埋めたわたしの責任だと思ったのです。
雲の切れ間から日が差してあなたを照らし出しました。
それはまるで、あなたの生きたこれまでを祝福しているような光でした。
それを一緒に浴びることができて、わたしはとても嬉しかったのです。
