なみなみ

全国大会を終え、岡山に帰ってきたぼくは、瀬戸内の海を眺めていた。
海は穏やかで、波の音と潮風が心地よかった。

この海からヒントをもらって編み出した必殺技『エイトウェーブ』は、完璧のはずだった。

体の小さなぼくたちが、全国大会で優勝するための秘策だった。
砂浜で鍛えた足腰と体力、波の動きを観察して手に入れた連携とフォーメーション。
これさえあれば、僕たちは無敵だ。ぼくたちは自信を持って全国大会へと向かった。

でも、だめだった。

エイトウェーブの唯一の弱点。それは、一度連携が乱れると修正が効かないこと。
そこを山梨代表に看破されて、僕たちは大敗を喫した。
並々ならぬ努力で手に入れた最強の必殺技の敗北。それはぼくたちに、やっぱりぼくたちはいくら努力しても弱いままなんだという現実を突きつけた。

そんなぼくたちを励ましてくれたのは、他でもない、対戦相手・山梨代表のひでまるくんだった。

ぼくたちと同じぐらい体が小さいのに、ぼくたちよりずっと強い彼は、その心もまた強いのだった。

そんな彼に「お前たちは強い」と言ってもらったことが、何よりも嬉しかった。
「悔しい」という気持ちが溢れかえりそうだったぼくたちの心は、ひでまるくんによって「嬉しい」という気持ちでいっぱいになった。
負けてしまったけど、一生懸命努力して、力を尽くして戦ったことは、絶対に無駄なんかじゃない。
そんなふうに、心から思うことができたんだ。

もし来年も代表に選ばれたら、もっと完璧なエイトウェーブで勝負がしたい。
そのためにはまた、並々ならぬ努力を重ねていかなくちゃならない。
体の小さなぼくたちの唯一無二の武器、それを磨いて、大きな波となって、日本中を驚かせたい。

ぼくは大きく深呼吸をして、それから「よし!」と気合を入れた。明日からまた頑張ろう。瀬戸内の海にそう誓った。