気に入っている場所がある。程よく人が居て、程よく活気がある場所だ。
そこで気まぐれに日向ぼっこをするのが何よりも好きだ。
日向で微睡む私に、煮干しをくれる少年がいる。赤錆のような頭髪の、まだ幼い面影をした少年だ。
彼と彼の仲間たちは二組に分かれて日々ボールを追いかけ奪い合っている。彼のチームはもう片方のチームに比べて明らかに実力が劣っている。
しかし彼らはめげずに日々戦う。その様子を私はいつも眺めている。
彼は帰り際に私に煮干しを与えながら、私の背中を撫でて話しかけてくる。
「今日は行けると思ったんだけどな」
「明日こそはレギュラーになれるかな」
と、悔しさと期待が入り混じった声だ。
私は適当に返事をしてやる。すると彼は元気になって帰っていく。その繰り返しだ。
そんなある日のことだった。
彼は明らかにいつもより興奮した様子で私の元へ来た。「サビ太、聞いて!」と、勝手に私に名付けた名前を呼ぶ。
「明日、レギュラーメンバーとして試合に出ることになったんだ!」
そう言って彼は私を持ち上げた。足が宙に浮いて落ち着かない。
私はジタバタと足を動かして抗議したのだが、彼は聞く耳を持たなかった。
「嬉しい! サビ太が毎日応援してくれたからだよ!」
応援などした覚えはないし、それより何より早く地面に降ろしてほしい!
私が目一杯の抗議の声を上げると、彼は何を勘違いしたのか「喜んでくれてるんだね!? ありがとう!」と喜んだ。
そういう意味で鳴いたのではない!
もう一度私は声を上げようとした、その時、
「本当に嬉しい……! 全国大会期間中でも、レギュラーとして試合に参加したいなあ」
彼は急にしみじみとそんな風に言った。
見ると、彼は目に涙を浮かべていた。その様子に私は思わず固まってしまった。
ゼンコクタイカイが何かはわからないし、そもそも彼らが興じているボールを追いかける遊びのルールもよくわからないのだが、彼が毎日必死になっていることは、さすがに私も知っていた。
毎日懸命にボールを追いかけ続けた結果、彼は報われたのだろう。それは素直にめでたいことだと思った。
私は抗議するのをやめて、一つ鳴いた。ねぎらいの一つくらいくれてやろうと思った。彼はハッと私を見た。
「サビ太……俺、頑張るよ」
その言葉にもう一つ返事をしようとした時、
「真田ー、帰るぞー!」
遠くのほうから仲間が彼を呼んだ。彼はそちらを振り返り、「わかったー!」と声を返した。
それから私に向き直り、私をようやく地面へ下ろす。
「じゃあサビ太、これ、今日の煮干し」
懐から煮干しを取り出し、彼はしゃがんで私にそれを食べさせる。
煮干しを食べている間、彼は上機嫌で私を眺めた。私が食べ終わるのを見届けると、彼はいつものように私の背中を撫でた。
「じゃあな、サビ太。また明日!」
立ち上がった彼は仲間の元へ走っていく。
彼が合流すると、彼の仲間はなんだか笑って、こんなふうに言った。
「錆色の頭をした真田がサビ猫を手なづけてるの、なんか面白いよな」
……何が面白いのか。人間の感性はよくわからないなと、私はあくび混じりに声を発した。
「……にゃあ」
