箱から取り出されたものを目にした途端、あなたは「わあ」と思った。
もしかしたら周囲の仲間たちと同じように、感嘆の声を漏らしたかもしれない。
「サムライブルーだ!」
興奮を抑えきれない様子でひでまるが言った。あなたは頷いた。
全国大会まで、残すところ二週間。
合宿最終日のこの日、あなたたちのもとに、ついにユニフォームが届いた。
去年は白が基調のデザインだったけれど、今年はどんな色だろう?
ユニフォームのお披露目を前に、あなたはいろいろ想像を巡らせたことと思う。
そうして到着したユニフォームは鮮やかな青色をしていて、それはさながら先日のワールドカップで日本代表が着ていたもののようだった。
興奮するあなたたちの名前を、監督が一人ずつ背番号順に呼んで、ユニフォームを手渡す。一塊だった青色は一枚ずつ剥がされて行き渡っていく。
そうしてついにあなたの番になった。
あなたは代表メンバーの一軍ではなかった。これまでの練習試合であなたがレギュラーとして起用されたことも一度もなかった。
だが、そんなあなたにも青のユニフォームは手渡された。
嬉しかった。だが同時に不安にも思った。
チームに何の貢献もできていない、ほとんど戦力外のような自分が、このユニフォームに袖を通してもいいのだろうか。そもそも受け取ってもいいのだろうか。
手渡された新品のユニフォームを見ていたそんな時、
「なあなあ! せっかくだからみんなでユニフォーム着て写真撮ろうぜ!」
ひでまるの明るい声が響き渡った。彼を見ると、もう既に今手渡されたばかりの七番のユニフォームに着替えていた。
そんな彼をいつものように才蔵が「勝手に決めるんじゃない!」と嗜めつつ、監督を伺う。監督が頷いたのを見て、仲間たちは声を上げて喜んだ。
どうやら全員、ひでまると同じように、一刻も早くこの綺麗な青色を身に纏いたいと思っていたようだ。仲間たちはいそいそと青いユニフォームに着替えた。
そんな中、あなただけはまだ戸惑っていた。これを着る資格が果たして自分にはあるのかと。
すると、悩むあなたに声を掛ける者がいた。
「着替えないのか?」
声の主を見上げる。そこにいたのはやはりと言うべきか、キャプテンを任せられている才蔵だった。
あなたは彼に、直接的に、あるいは婉曲して、心のうちを吐露した。
すると彼は「大丈夫だよ」とあなたに言った。
「直接試合に出れなくても、控えメンバーに選ばれなくても、そこに居るだけで価値がある
俺たちは全員で戦っているんだ。お前も、俺も、みんなが居るから意味があるんだ」
そうして励ますように彼はあなたの背を叩いた。その仕草と言葉に、あなたは勇気づけられる。
あなたの中に燻っていた戸惑いや不安は無くなっていた。
あなたは頷いて、ようやく青色のユニフォームに袖を通した。
それを待ち侘びていたかのように、ひでまるがあなたを呼んだ。
「写真撮ろうぜ! はやくー!」
青のユニフォームを纏った集団の中から、腕と尻尾を振り回して叫ぶひでまるに、才蔵と共に返事をする。
「行こうぜ」
才蔵に頷いて、彼の後に続いて駆け出し、あなたは仲間たちへと合流する。
あなたを迎え入れた青の群れは、空の青よりも海の青よりもなお青く輝きを増すのだった。
