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山梨代表って合宿しないの?
ずっと崇拝しているひでまる二次創作サイト様で見たその言葉に、そうだよな!!? と思ったのがきっかけでした
絶対やってるやろ合宿!! 県内の優秀な選手を集めて全国大会を目指そうっていうチームが! 合宿しないでか!!
合宿ってことは二泊三日とかそんな短期間なわけがないよな。少なくとも一週間はあるよな?
だったらその間、炊事当番とか掃除当番とか……洗濯当番だってあるはず!
……才蔵と一兄が洗濯してるとこ、見たくないか????
見たい!!!!!!
ぜーったい二人とも手際が良い! ちゃんと干す前に服を振り捌くし、裏返しにひっくり返して丁寧に皺を伸ばしながら一つずつ干していく! 何ならもうその前段階の干し竿を用意するところから絶対テキパキしてる!!
ていうかもう、絶対洗濯物と青空が背景の才蔵が似合う!!
画が浮かんだ瞬間、思いました。書くしかない! そう勢い勇んで書き始めました
当初の予測通り、洗濯物を干す二人の姿はこの上なく鮮明に浮かびました。ウキウキしながら筆を進めました
しかし、そこから先が超難産でした
原作を知らないかたがほとんどだと思うのでここで補足するのですが(そもそも原作を知らないかたがこのページを見ているのか? という疑問はさておき)
才蔵の顔面には、左頬から鼻根にかけて大きく走る傷跡があります
それは試合中に、相手チームに所属していた一郎丸が不慮の事故で負わせてしまった大怪我の跡です
才蔵という選手は山梨県下ナンバーワンの呼び声が高いゴールキーパーで、そんな選手に一生残る傷を負わせてしまったことに負い目を感じた一郎丸はサッカーをやめてしまします
真面目で責任感が強い一郎丸は、サッカーに関する事象、こと才蔵に関係することを前に、強いストレス反応を起こすようになってしまうのです
そんな一郎丸を、県代表としてひでまるが迎えに来て、何とかトラウマを克服し、才蔵と約一年ぶりに会話を交わす……そして才蔵は山梨代表選手のキャプテンに、一郎丸はエース(10番)に選出されます
で。この『そして明日も洗濯をする』は、その直後の代表合宿を舞台にしています
真面目で責任感が強い一郎丸は、果たして素直に10番を受け入れられるのか?
迷い苦しむ一郎丸を前に、才蔵は、何て言うのか?
導くのか? 歩み寄るのか? 待つのか?
……答えは、すぐに出ませんでした
ラスト近くの才蔵のセリフに、こんなものがあります
「なあ。汚れた服は買った時のようにはならないよ。
汚れを落としてもどうしたって痛むし、気に入っていればいるほど型崩れだってする
そんなのはもう織込み済みだから、無理に以前のように振舞おうとなんてしないでくれ」
この言葉は、書き始めてすぐに、才蔵ならこう言うだろうと浮かんだものです
けれど、どういう会話の流れでこのセリフが飛び出すのか、それが全く道筋として見えてこなかった
結果的にこのお話は、2017年に執筆し始めて一度、お蔵入りしました
その当時の自分では、いくら考えても、才蔵がこのセリフを言うに至る心境が想像できなかったのです
小説を書く人なら分かってくれると思うのですが、
ずっとずっと、書けないままの小説を抱え続けることは、なかなかにしんどいです
自分がこれを書いても良いのか、無責任にならないか、他人事にならないか、上から目線にならないか
そう考えることは奇しくも、才蔵が一郎丸を前にずっと言葉を選び続けていたことに近かったと思います
そう気づいた時、やっとこの続きが書ける、と思ったのを鮮明に覚えています。2022年のことでした。実に5年間、ずっとこの話を考え続けていたことになります
小説というものは、書けるタイミングというものがあると思います
それは自分を取り巻く環境だったり、自分の考えの変化だったり……ジャンルの移り変わりも有るかもしれません
今回の場合は、5年経ってようやく、自分がこの話を核に相応しい器になれた。今の自分ならこの話を書いても、冷たくもなく、無責任でもなく、突き放した風にもならず、上から目線にもならない。そんな風に思えたのだと思います
でも逆に、未熟だったからこそ書けるお話だってあります
そうして書く機を逃したお話が多々あることも事実です
でも、それもいずれまた、自分が書くに相応しいと思える時期が来るのかもしれない
……来ないかもしれないですが
才蔵と一郎丸のお話を書くのは本当に難しくて、このジャンルで20年近く活動しているというのに未だに満足に絵も小説も描けた試しがありません
でもだからこそ、いつかこの二人を嘘っぽくなく描けるようになることが、
わたしにとって、自らの酷くこびりついた汚れを落とすことになる……そんな風に、思います


