久我有加先生の『酸いも甘いも恋のうち』の感想です
栗梅亭真遊いいキャラすぎか??????????????
あまりに良すぎる。人を惹きつける華があって、機転が利いて、芸人としてというかもうもはや表舞台に立つ人種として言うこと無しの逸材なのに、正統派古典落語をやる『六代目真寿市』の倅としては異端すぎて落語通からの目は厳しい、っていうのが……!
作中でも言及があった通り、別に落語は世襲制じゃないし、世間の評判を気にせず自分の思う落語をすれば良いとわたしも思うのだけど、当人たちがそう思ってても世間は納得しないわけで、この独特さが古典芸能ならではの葛藤で……世襲制じゃないからこそ望んで真遊が落語家になったというのももう一つ皮肉で……!!
古典落語で少しでも笑いが取れていたら、もしかしたらプロにはならなかったかもしれない。プロになったのは「まだできていないことがある」と思ったから。というのがもうあまりにストイックで……!!
だから落語家として、古典落語が出来る山川小藤の才に嫉妬する気持ちと、広坂満として神保富秋に惹かれるからこその葛藤が面倒くさくて最高すぎる……!!
もっと人間として成熟していたら「それはそれ、これはこれ」と割り切れていたのかもしれないけど、25歳の若造にはそりゃあ無理だよな!!っていう!!!
本当に毎度毎度久我先生は、そのキャラクターならではの葛藤と、そこから生まれる物語を紡ぐのが上手すぎる……!!
そしてこのキャラ造形に志水ゆき先生の絵とキャラデザがあまりにも合ってて……!!
志水先生の絵、トラナナあたりのFEっぽい感じで、ちょうど2000年代初頭っぽい雰囲気で凄く綺麗で好きです……! カラー絵はアナログならではの柔らかい色味で、モノクロでは特に小藤君のツヤベタがめちゃくちゃきれいで……!
小藤君というか富秋のほうは、こっちはこっちでまた違う面倒臭さがあってそれはそれで最高
面白いものを素直に面白いと思える感性の豊かさが、ただ一人の芸人として真遊という芸人に打ちのめされていくのがすごい良くて……
しかも富秋は山川小藤として栗梅亭真遊を尊敬する気持ちと神保富秋という落語オタクとの境目がほとんどなく、故に真遊のこともただ一人の人間として尊敬しているし嫉妬もするし焦ってしまうというのが真逆で、ああーいいねいいね! って思う。びっくりするほど不器用で愛想なしで、思ったこと全部口に出てしまうから嘘がつけないって言うのが、天才か????という
そりゃあ大して親しくもない人間からしたら「えっ怒らせた?」ってなるし、人づきあいが苦手なのもすごく分かるけど、その本質を知っている人間にとっては可愛くて仕方ないよなーーーーっていう
真遊はバラエティ慣れしてるしテレビ慣れしてるしで自分を演出するのが日常だし天然でできるタイプだから、余計に富秋が可愛くて仕方ないんだよな……わかる、わかるぞ
そう言えば富秋、地味系の綺麗な顔立ちに細身で仏頂面で甘党で猫舌、おまけにココクピまでやるという、かなりテンプレ受けをなぞったキャラ造形だな!? と気づいたのは後半も後半、真遊宅でココア飲んでるシーンでした。それまでにココアを飲むシーンがちゃんとあったのに全く気付かなかった
なんかもうすごい、一流の作家が描くとドテンプレでも記号にならないんだ、ちゃんと緻密な描写でキャラクターとして昇華されるんだ……と呆然としてしまった。気づくまでふっつうに「へえー、そういうプロフィールなんだ」って軽く流してた……凄まじすぎる
ココクピ受けの最適解を見せつけられました。大変ありがとうございました
と同時に、これは芝山と由と祐は逆立ちしてもやらんわ……と確信が持てました。そういう意味でもありがとうございました
由の話が出たので「あ!?」と思ったことをここで言うんですが、なんと山川小藤と鷹司由、栗梅亭真遊と深野大基の身長とCP間の身長差が同じなんですよね
いやまあ、数字が確定してるのは小藤172、深野177、CP間身長差5cmなので、正確にはズレがあると思うんですが……真遊、おまえ180無いのか……!?と、かなり驚きました。いや、深野が180無いのも今考えても「うそやろ」感有るけど
でもここ二人も表面張力と同じで、身長差よりも体格差がありそう
作中に描写は特になかったけど、富秋も由と同じで攻めの服着たら袖余るタイプだろうな……と思ってます。えっ富秋萌え袖まで確定なの!? おっそろしいな……
あとそう、世渡り上手溺愛攻め×童貞健気受け、最高すぎるな?????
これもある種テンプレと言えばテンプレ的な攻め受け構図なんだけど、受けが情事でいきなり可愛くなり過ぎないのも久我作品のすっさまじいところだとわたしは思っていて、
普段からストレートに思ったことを口に出しちゃうタイプの富秋だから、羞恥で頭が回らなくなった瞬間喘ぐか満の名前を呼ぶしかできなくなるのも、気持ちいいと思ったらそのまま口に出てしまうのもめちゃくちゃ納得だし、
根が負けず嫌いだから「俺だけ恥ずかしいの嫌や」って口淫するし、でも満以外と付き合ったことが無いから満のやり方をぎこちなく真似するっていう
それに対して「こんなん、どこで覚えてきたんや……あ、俺か」ってなってる満も良すぎてめちゃくちゃニコニコしちゃう。そうですあなたが仕込みました! そりゃ可愛くて仕方ないよね溺愛してしまうよね!!!!
溺愛し倒すのにヘタレ要素がないところは久我作品ではちょっと珍しいタイプの攻めだな、と思うなどしました。いや、わたしも久我作品全部読んでるわけじゃないけど……少なくとも芸人シリーズの漫才・コント方面では居なかったタイプだし、噺家講談師でも青嵐はこのタイプではなかった。やろうと思えば8割エロで書けそうなタイプの攻めだなあ、好きです。それはそれで読みたい
そんなこんなでめちゃくちゃ面白かったのと、二人の今後が気になって、読了した瞬間に『恋は読むもの語るもの』での真遊の登場シーンも再確認してきたのですが、しっかり葛藤を乗り越えて(本当は乗り越えていないのかもしれないけど)噺家としてしっかり評価されている様子が見て取れたので、安心するなどしました。良かった良かった!
久我先生のブログで番外編短編もしっかり読んできて、すげえな真遊……と思うなどもしました。本人は「茨の道」と言っていたけど、普通にこの落語見たいわ。覚悟を決めた男ほど格好いいものは無いですね!
芸人シリーズの噺家方面は一応全部電子で揃えている(つもり)なんですが、全然まだ読めていないので、ちょこちょこ読んでいきたいです。割かしクロスオーバーで真遊は出てきてくれるらしいという情報も聞いているので、再会が楽しみ!
……そういえば、この話の発行から半年以内に『片恋の病』が来てるみたいなんですが、作中での『全漫』の扱いが微妙に異なって居たり、噺家・講談師方面で出てくる漫才師が漫才・コント方面と全く違うので、「お?」となっています
別次元解釈と見て良いのか……どうなんだ……!? 久我先生の文体も全然違うものだし……!
一口に『芸人シリーズ』と言ってもまた全く別の世界観だと考えたほうが間違いが無いのか……!? その辺を確かめる目的でも、他の話も読んでいきたいですね!


